旧田口家の身体測定
- サイズ
- 桁行25.2m 梁間13.3m
- 仕様
- 切妻造鉄板葺
- 外観の特徴
- 2階建て。建築当時は榑葺きだったが、移築時には鉄板葺きとなっていた。家をひさしがぐるりと囲っている。南側(裏面)に突出部が附属、味噌部屋として使われていた。
旧田口家は、飛驒と美濃との国境に位置する集落にありました。代々名主を務めた大きな農家です。そのため、村の寄り合いなどに対応できるように部屋数も多く、イロリも長方形の大きなものが二つ、正方形の小さなものが一つ配置されています。
飛驒地方の中でも温暖な地域にある建物のため、家の前から右横へ雨戸の外に濡れ縁がまわっており、雪深い地域の民家と比べて開放的です。入口を入ると広い土間があり、左手にはウマヤ、ウスニワ、右手にはダイドコ、オエと板の間が広がります。
板の間はちょっとしたコンサートが開けるぐらいの広さで、多くの人が集まり寄り合いが開かれた様子が目に浮かびます。広大な板の間の奥には、畳が敷かれたデイやナンド(納戸)、その間には部屋にもなる六畳の畳廊下、そして一段高い仏間があります。また、ナンドの上には「落し座敷」と呼ばれる隠し部屋がありますので、是非探してみてください。何のために隠し部屋があったのか諸説様々ですが、国境にあることから、百姓一揆の首謀者などお上から逃げている人をかくまったのではなど想像できます。立派な民家ですが、雪の少ない地域から移築したために、「56豪雪」と呼ばれた1981年の大雪で、約60cmの積雪によって梁が折れてしまったことがありました。同じ飛驒地方の中でも合掌造りの民家はもちろん、榑葺き民家でも地域によって違い、それぞれの環境に即して建てられたことが実感できます