旧道上家の身体測定
- サイズ
- 桁行17.7m、梁間9.4m
- 仕様
- 茅葺き入母屋造り
- 外観の特徴
- 屋根は丸みのある入母屋造りで、屋根にある破風口は小さく、また妻側の壁は堅い羽目板になっている。北・南面に板葺き下屋が附属。
旧道上家があったのは、飛驒の最北端で越中(現富山県)との国境の集落でした。外観を見ると、同じ茅葺き入母屋造りの旧吉真家、旧冨田家と比べて屋根のすそが横に丸みを帯びて広がり、どっしりとした印象を受けます。またページ上部の外観写真で見ると、陽が当たっている妻側の茅葺き屋根の下部が大きく切り取られています。ここには障子窓を設けて中二階の明かりとりとしました。中二階や二階を広くとって養蚕を営むのに配慮した建物です。
このようなつくりを入母屋造りの中でも特に「兜造り」と呼んでいます。まさにかぶとを被ったようなユーモラスな外観で、関東地方の養蚕の盛んな地域でもよく見受けられます。
破風は「ヒダチサクミ」といわれているもので、茅で壁をつくり中央部には小さな明かり窓を設けています。窓にはムシロを吊るしており、2階での養蚕作業にあわせて開閉しました。内に入ると、中央が吹抜けになっており、周囲を中二階がぐるりと巡っています。養蚕の最盛期には、中央の吹抜けに板を敷き、中二階全体が広い作業スペースに早変わりしました。二階(中二階を入れると三階にあたる)と合わせるとかなり広大な作業場で養蚕が営われたことがわかります。
中二階からの梁組みには立派なチョウナ梁が用いられています。旧道上家では太い柱、梁、桁にケヤキ材をふんだんに使用しています。しかし当時、ケヤキ材は「御禁木」、または「御止木」と呼ばれ、江戸幕府によって民家に使用することが禁じられていました。公儀に気を使ってケヤキを別の木材として扱ったりしましたが、当地域にはケヤキが豊富にあったことを今に伝えています。